「eスポーツは若者のものでしょう」「高齢の親にゲームなんて難しいのでは?」
このような先入観を持っている方も多いかもしれません。
しかし近年、eスポーツは高齢者の健康づくりや生きがいづくり、脳トレなどの手段として注目され、体験会や介護施設のレクリエーション、シニア専用の施設まで、参加できる場が全国に広がっています。また、スポーツ庁も推進に乗り出しており、「シニアeスポーツ」という言葉が定着しつつあります。
この記事では、高齢者がeスポーツに取り組むメリットや注意点、おすすめのゲームジャンル、始め方、全国の事例まで、はじめての方にもわかりやすく解説します。ご自身やご家族で始めたい方は、まずお住まいの地域の体験会から試してみてください(探し方は4章で紹介します)。
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1.高齢者がeスポーツをするメリット
「eスポーツは若者のもの」というイメージがある一方で、高齢者とeスポーツの親和性が注目されています。背景にあるのは次の3つです。
- 激しい運動を必要とせず、車いすの方や体力に自信のない方でも取り組める
- 国内外の研究や自治体の実証事業で、認知機能や身体機能への良い影響が報告されてきた
- スポーツ庁が推進に乗り出し、全国の自治体が体験会や講座を開いている
ここでは、実証事業のデータをもとに、高齢者がeスポーツをする4つのメリットを解説します。
(1)脳トレになり認知症予防・記憶力アップが期待できる
奈良県川西町の実証事業(2022〜2023年、12名)では、週1回・3か月のeスポーツ教室のあと、軽度認知機能の疑いがあった人が6名から1名に減りました。
複数の研究をまとめた2026年のメタ分析でも、軽度認知障害のある高齢者がビデオゲームに取り組むと、認知機能検査の得点が有意に上がることが報告されています。
ゲームをプレイする際には、画面の情報を素早く読み取り、次の動きを予測し、手を動かすという一連の動作を同時にこなす必要があります。こうした複合的な脳への刺激が、認知機能の維持・向上につながると考えられています。「慣れないことへの挑戦」が脳を刺激するという点でも、新しいゲームに取り組むこと自体が認知症予防のトレーニングになるといえるでしょう。
(2)フレイル予防・身体機能の維持が期待できる
同じ川西町の実証では、歩行能力を測るTUGテストが平均6.1秒から5.8秒に、椅子からの立ち上がりテストが8.2秒から5.5秒に改善しました。
フレイルとは、加齢によって心身の活力が低下し、要介護に近づいた状態のことです。eスポーツはフレイル予防の手段としても注目されています。
プレイ中は、手や指を細かく動かし、目と手の協調運動を繰り返します。こうした動作が反射神経や集中力の維持に役立つとされており、激しい運動をしなくても身体機能の低下を緩やかにする効果が期待されています。
(3)気持ちが前向きになる・生きる意欲が高まる
西東京市が東京大学と行った2024年度の検証では、高齢者の生きがい感を測る尺度のうち「生きる意欲」の得点が、活動の前後で有意に高まりました。また、参加者の75.9%が「続けたい」と答えています。
さらに、2025年に公開された「高齢者eスポーツ導入ガイド」でも、eスポーツへの参加でストレスが軽減し、前向きな感情が増えたという研究が紹介されています。
ゲームをクリアしたときの達成感や、上達していく喜びは、日常生活の中で感じにくくなりがちな「自信」や「やりがい」を取り戻すきっかけになります。また、定期的にeスポーツに参加することで生活にリズムが生まれ、「次の体験会が楽しみ」という気持ちが前向きな生活習慣の形成につながるケースも報告されています。
(4)仲間とつながる・多世代交流ができる
eスポーツは、年齢や身体能力に関わらず同じ土俵で楽しめるため、仲間づくりの場になります。施設や自治体が開く体験会や教室では参加者同士が自然と会話をするきっかけが生まれ、同じ趣味を持つ仲間と出会いやすくなります。
また、若い世代との交流が生まれやすい点も特徴です。体力差が出やすいリアルスポーツと異なり、eスポーツでは高齢者が孫世代と対等に競い合える場面が生まれます。茨城県では高校生が運営する体験会、埼玉県入間市では中学生や学生ボランティアが参加する教室で、世代を越えた交流が生まれているとの報告があります。
さらに、西東京市の検証では、活動後に外出の回数が有意に増えており、eスポーツが外に出るきっかけにもなっています。
出典:株式会社PREVENT「奈良県川西町でのeスポーツを活用したフレイル予防事業において事業評価を実施」/西東京市「健康eスポーツ事業のフレイル予防効果検証調査報告書(令和6年度)」/千葉大学予防医学センター・日本eスポーツ連合「高齢者eスポーツ導入ガイド」/茨城県「eスポーツによる高齢者の生きがいづくりについて」/入間市「高齢者がゲームで若返る?入間市がeスポーツで健康革命に挑戦」/Liu B, et al.「The effects of video games on cognitive function in older adults with mild cognitive impairment: a meta-analysis」(Frontiers in Aging Neuroscience, 2026)/スポーツ庁「令和6年度 Sport in Life推進プロジェクト」
2.高齢者がeスポーツをするデメリット・注意点と対策

ここでは、高齢者がeスポーツをするデメリット・注意点と、その対策について解説します。
(1)目・腰への負担は「1回1時間以内」とこまめな休憩で防ぐ
eスポーツはリアルスポーツと比べて身体への負荷が少ない一方で、長時間のプレイは目や腰への負担につながる点に注意が必要です。画面を長時間見続けることによる眼精疲労や、同じ姿勢を続けることによる腰痛は、高齢者にとって特に起こりやすいトラブルです。
「楽しいからついつい続けてしまう」という声も多いため、時間を意識して取り組む工夫が欠かせません。
- 1回のプレイは1時間以内にし、途中でこまめに休憩を取る(「高齢者eスポーツ導入ガイド」に記載されている目安)
- 「今日は30分だけ」のように、始める前にプレイ時間を決めておく
- 画面の明るさや文字の大きさを調整し、逆光にならない位置に座る
- 休憩中やプレイの前後に、軽くストレッチをする習慣をつける
(2)操作の難しさは「簡単なゲーム」と周りのサポートで乗り越える
コントローラーやキーボードの操作に慣れるまでに時間がかかることも、高齢者がeスポーツを始める際のハードルのひとつです。「覚えることが多くて難しい」「うまくできなくて恥ずかしい」と感じて途中であきらめてしまうケースも少なくありません。
最初からうまくできなくて当然という気持ちで、焦らずゆっくり取り組むことが長続きのコツです。
- 「太鼓の達人」「ぷよぷよeスポーツ」のように、操作がシンプルなゲームから始める
- 家族や施設スタッフ、地域の体験会スタッフに、初期設定や操作の説明を手伝ってもらう
- 慣れてきたら少しずつ難易度を上げ、「難しすぎず簡単すぎない」手応えを保つ
- 体験会でいくつかのゲームを試し、自分が「楽しい」と感じるものを見つける
(3)「ゲームは身体に悪い」の誤解は、実証データと一緒に体験することで解く
「ゲームは身体に悪い」というイメージを持つ方は、高齢者本人だけでなく、その家族にも多くいます。しかし、1章で紹介したように、適切な時間・環境で取り組んだ場合には、認知機能や身体機能への良い影響が実証事業で報告されています。
大切なのは「やりすぎない」ことです。
3.高齢者におすすめのeスポーツジャンル・ゲーム
高齢者がeスポーツを始める際に大切なのは、自分の興味や体力に合ったジャンルを選ぶことです。以下に、シニア世代が取り組みやすいジャンルと代表的なタイトルを紹介します。
また、eスポーツの基本的な種目については、以下のページもご参照ください。

▼高齢者向けによく選ばれているジャンル別タイトル一覧
| ジャンル | タイトル(機種) | 向いている人・特徴 |
|---|---|---|
| 脳トレ・パズル系 | ぷよぷよeスポーツ(Nintendo Switch) | 落ちものパズルの定番。難易度を調整でき、対戦もできる |
| 脳トレ・パズル系 | ぷよぷよテトリス(Nintendo Switch) | ぷよぷよとテトリスの2本立て。1本で2種類遊べる |
| 脳トレ・パズル系 | 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング(Nintendo Switch) | 計算・記憶などの脳トレ。1人でも続けやすい |
| スポーツ系 | Nintendo Switch Sports(Nintendo Switch) | ボウリング・テニスなど8種目。体を動かして遊べる |
| スポーツ系 | リングフィット アドベンチャー(Nintendo Switch) | 運動不足の解消向け。負荷を細かく調整できる |
| 対戦・コミュニケーション系 | 太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル(Nintendo Switch) | 操作がシンプルで盛り上がる。高齢者向けの定番 |
| 対戦・コミュニケーション系 | 世界のアソビ大全51(Nintendo Switch) | 将棋・麻雀・トランプなど51種。なじみのある遊びから入れる |
| レース系 | グランツーリスモ(PlayStation) | ハンドル型コントローラーで運転の感覚を楽しめる |
| ほのぼの・スローライフ系 | あつまれ どうぶつの森(Nintendo Switch) | 時間制限も対戦もなく、自分のペースで遊べる。孫世代と話題を共有できる |
(1)脳トレ・パズル系
記憶力や思考力を使うパズルゲームやクイズゲームは、認知症予防を意識している方に特におすすめのジャンルです。難易度を自分で調整できるものも多く、はじめてゲームに触れる方でも取り組みやすいのが特徴です。
代表的なタイトルとしては、落ちものパズルの「ぷよぷよeスポーツ」(Nintendo Switch)などが挙げられます。対戦形式で楽しめるため、施設や体験会でのレクリエーションとしても活用しやすいでしょう。
(2)スポーツ系
テニスやボウリング、ゴルフなどのスポーツをゲームで体験できるジャンルです。実際に身体を動かしながら楽しめるタイトルも多く、運動不足の解消にもつながります。
たとえば「Nintendo Switch Sports」であれば、直感的な操作で楽しめます。ゲーム初心者の高齢者にも受け入れられやすく、家族や施設スタッフと一緒に盛り上がれる点も魅力です。
(3)対戦・コミュニケーション系
他のプレイヤーと対戦したり、協力して目標を達成したりするジャンルです。勝ち負けを競う楽しさだけでなく、対戦相手との会話や交流が生まれやすく、社会参加の場としても機能します。
「太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル」(Nintendo Switch)は音楽に合わせてリズムよく太鼓を叩く操作がシンプルで、幅広い年代が一緒に楽しめます。全国の自治体や介護施設でのeスポーツイベントでも広く採用されており、2024年のねんりんピックではeスポーツ初の正式種目にもなりました。
出典:Yahoo!ニュース「公民館で「太鼓の達人」を楽しむシニアのeスポーツ同好会。90歳・86歳・70歳のチームで<ねんりんぴっく>に出場!」
(4)ほのぼの・スローライフ系
時間制限や敵との対戦がなく、自分のペースでのんびり楽しめるジャンルです。農場を育てたり、島の住人と交流したりするゲームが代表的で、「あつまれ どうぶつの森」(Nintendo Switch)は代表例として知られています。
失敗してもペナルティがなく、プレッシャーを感じずに取り組めるため、ゲームに不慣れな方の入口としても適しています。また孫世代に人気のタイトルも多く、多世代交流のきっかけになりやすい点も特徴です。
なお、このジャンルは競技性を伴わないため、厳密にはeスポーツには含まれませんが、eスポーツへの入口として親しみやすいデジタルゲームとして広く紹介されています。
4.eスポーツの始め方|機材・費用と無理なく続ける方法
「eスポーツに興味はあるけれど、何を用意すればいいかわからない」という方のために、ここでは始めるために必要なものと費用の目安、そして無理なく続けるコツを整理します。
(1)必要な機材と費用の目安
まずは、eスポーツを始めるために必要な機材と、費用の目安を紹介します。
①必要なもの
eスポーツを始めるにあたって最低限必要なものは、以下の4つです。
- ゲーム機本体(またはパソコン)
- ゲームソフト
- テレビやモニター
- インターネット環境
高齢者の方に特におすすめなのは、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)です。操作がシンプルで直感的に使えるタイトルが多く、テレビに接続して大画面でプレイできるため、目への負担も軽減できます。パソコンを使ったeスポーツと比べて設定が簡単で、家族のサポートがあれば比較的スムーズに始められます。
インターネット環境については、オンライン対戦をしない場合は必須ではありませんが、ソフトウェアのアップデートなどを行う場合にあると便利です。
②初期費用の目安
Nintendo Switch(通常モデル)を例にとると、初期費用の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安(2026年9月時点・税込) |
|---|---|
| Nintendo Switch本体(通常モデル) | 43,980円 |
| ゲームソフト(1本) | 約2,000〜6,600円 |
| 合計 | 約46,000〜50,600円 |
後継機のNintendo Switch 2(59,980円)でも同じソフトの多くが遊べますが、本記事で紹介するタイトルは通常モデルで十分です。テレビがすでにあれば、本体とソフトを買い足すだけでOK。ゲームソフトは買い切り型のものが多く、購入後のランニングコストもほとんどかかりません。
リアルスポーツと比べて用具の消耗がなく、長期的には費用を抑えやすい点もeスポーツの魅力のひとつです。
出典:任天堂「当社商品およびサービスの価格変更に関するお知らせ」/マイニンテンドーストア「Nintendo Switch Sports」/マイニンテンドーストア「ぷよぷよeスポーツ」
(2)無理なく始めて続けるコツ
高齢者がeスポーツを続けるには、できるだけハードルを低くすることが大切です。
①購入前に体験会で試してみる
eスポーツに興味はあるけれど、「自分にできるかどうか不安」「何から始めればいいかわからない」という方には、まず体験会への参加がおすすめです。
体験会では機材の準備やゲームの説明をスタッフが行ってくれるため、初めての方でも気軽に試せます。
実際に触れてみることで「思ったより簡単だった」「これなら続けられそう」という感覚をつかみやすく、その後の機材購入や自宅での取り組みへの判断材料にもなるでしょう。
お住まいの自治体や地域の社会福祉協議会、介護施設などが体験会を開催している場合があります。まずはお近くの地域包括支援センターや市区町村の高齢福祉担当窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
②家族や施設スタッフのサポートを借りる
初めてeスポーツに触れる際は、一人で始めようとせず、家族や施設スタッフのサポートを借りることをおすすめします。初期設定や操作方法の説明を手伝ってもらうことで、最初のハードルを大きく下げることができます。
③仲間と小さな目標を持って続ける
一人で黙々とプレイするよりも、一緒に楽しめる仲間がいることが長続きの大きな原動力になります。施設や自治体が主催するeスポーツ教室や体験会に定期的に参加すれば、同じ趣味を持つ仲間と出会いやすくなります。
「次の教室までにこのステージをクリアしよう」といった小さな目標を持つことも、モチベーション維持に効果的です。
5.高齢者eスポーツの取り組み事例
ここでは、高齢者向けのeスポーツがどこで・どのように行われ、どんな結果が出ているのかを、目的別に紹介します。自治体の事業として導入する際の体制づくりや予算については、章末の関連記事をご覧ください。
(1)効果が数値で確認された事例
①奈良県川西町(株式会社PREVENT・川西スポーツクラブ)

2022年11月から2023年2月にかけて、町民のアクティブシニア14名が週1回・全12回のeスポーツ教室に参加しました。指導は健康ゲーム指導士の資格を持つスポーツクラブのスタッフ、前後の評価は名古屋大学医学部発のスタートアップ・株式会社PREVENTが担当しています。
最終評価を受けた12名(平均71.9歳)では、認知機能検査MoCA-Jで軽度認知機能の疑いがある25点以下の人が6名から1名に減少。TUGテストは平均6.1秒から5.8秒、椅子立ち上がりテストは8.2秒から5.5秒へと、いずれも有意に改善しました。この事業は奈良県の「大和平野中央田園都市構想推進のための事業」に採択され、費用の一部が補助されています。
出典:株式会社PREVENT「奈良県川西町でのeスポーツを活用したフレイル予防事業において事業評価を実施」/奈良県川西町「eスポーツを活用したフレイル予防の効果検証事業を開始します」
②秋田県社会福祉協議会×秋田大学
秋田県社会福祉協議会は2024年11月から2025年2月にかけて、秋田市2か所・仙北市1か所で65歳以上の住民(計約30名)を対象に、週1回・計12回のeスポーツを実施。秋田大学高齢者医療先端研究センターの協力で、前後の認知機能・身体機能を測定しました。
同協議会の令和6年度事業報告は「記憶力や情報処理速度といった認知機能の改善など一定の効果が得られた」としています。データ解析にあたった秋田大学の大田秀隆教授は2025年3月の報告で、検証前後で軽度認知障害(MCI)の症状が見られる人が10%以上減少し、記憶力・情報処理能力・うつ傾向の改善と足腰の筋力向上が確認されたと述べました。2025年度は秋田市と由利本荘市で継続しています。
出典:秋田県社会福祉協議会「令和6年度 事業報告」/秋田健「『eスポーツ』の健康効果検証、軽度認知障害が10%以上減少」
③東京都西東京市×東京大学高齢社会総合研究機構
西東京市は2022年度から、市民ボランティア「健康デジタル指導士」が高齢者施設やサロンを訪問するeスポーツ出張講座を続けています。「太鼓を叩くゲーム」や「運転をするゲーム」を、手や足を使った簡単な運動と組み合わせて実施するスタイルが特徴です。
東京大学高齢社会総合研究機構との2024年度の効果検証では、市内6か所の福祉会館などで週1回約2時間・4週連続の講座を行い、分析対象54名(平均75.2歳)で「生きる意欲」が活動前後で有意に上昇、外出頻度も有意に増加しました。参加者の75.9%が「続けたい」と回答しています。出張講座から参加した高齢者の中には、後にねんりんピックのeスポーツ交流大会で「最高齢者賞」を受賞した例もあります。
出典:西東京市「健康eスポーツ事業のフレイル予防効果検証調査報告書(令和6年度)」
(2)自治体・介護施設・民間施設で交流や生きがいにつながった事例
①横浜市青葉区
横浜市青葉区は2023年度、高齢者の社会参加促進を目的にeスポーツ体験会をモデル実施しました。区役所での約60分の体験会(2日間・延べ29人)に続き、区内13か所で延べ200人が参加。アンケートでは「楽しかった」が9割を超え、「続けたい」という継続意向も9割を超えました。
2024年度以降は評価検討委員会・事業検討会で検証を続け、2026年2月には横浜F・マリノスのeスポーツチームと連携した「シニアeスポーツフェスタ」(定員80名)を開催しています。
出典:横浜市青葉区「高齢者の社会参加促進に向けたeスポーツ活用検討について」/横浜市記者発表資料「シニアeスポーツフェスタを開催します」
②埼玉県入間市

入間市は2025年5月から2026年2月まで、「宮寺・二本木地区eスポーツモデル事業」として市内在住65歳以上を対象に、2会場・定員各20名で「太鼓の達人」などの体験会を全12回実施しました。
地元の武蔵中学校の生徒や学生ボランティアとの世代間交流を組み込んでいるほか、参加者が自宅や地域でも続けられるよう、機器の操作やプロジェクターへの接続方法まで学べる内容になっています。効果測定アンケートをもとに、市内全域への展開を検討するとしています。
出典:入間市「高齢者がゲームで若返る?入間市がeスポーツで健康革命に挑戦」
③静岡県沼津市 デイケアさとやま(医療法人友愛会)

沼津市の通所リハビリテーション施設「デイケアさとやま」では、レクリエーションのマンネリ化の解消を目指し、職員が「健康ゲーム指導士」(日本アクティビティ協会認定)の資格を取得したうえで、2023年7月からeスポーツを常設のレクリエーションとして導入しました。
導入当初は戸惑う利用者が多かったものの、現在は利用者全体の2〜3割が定期的にゲームを楽しんでいます。特に人気なのは「太鼓の達人」で、自宅用に購入した利用者もいるほどです。家族との会話につながった人や、仲が良くなかった利用者同士が仲良くなったケースもあり、ケガで在宅療養中の利用者が「早く復帰して太鼓の達人を楽しみたい」と治療の励みにしている例も紹介されています。運営の工夫は「強制しないこと」と「飽きさせないこと」で、月1回の職員会議で内容を見直し、オンライン対戦や大会参加も取り入れています。
出典:公益社団法人日本介護福祉士会 note「eスポーツをレクに取り入れた通所リハビリテーション施設」
④茨城県筑西市 デイサービスセンター楽フィット筑西(セキショウライフサポート)

筑西市のデイサービスセンター楽フィット筑西では、60〜90代の利用者約120人が週1〜2回、カーレースや太鼓のリズムゲームを楽しんでいます。「最初は気が進まなかったけど、やってみたら面白かった」という利用者の声が寄せられました。
運営元の関彰商事は筑波大学と共同研究契約を結び、2022年2月から利用者約100名を対象に、運動とeスポーツの併用が体力・気分・認知機能に及ぼす効果を検証しました。
出典:東京新聞「eスポーツでお年寄りの心身向上 茨城・筑西のデイサービスで実証実験」/関彰商事株式会社「筑波大学との共同研究『eスポーツで引き出すWell-beingに関する研究』」
⑤神戸市 ISR e-Sports(シニア専用eスポーツ施設)
引用:ABCテレビニュース「【なぜ】シニア層がゲームに夢中 日本初の60歳以上限定eスポーツ施設が盛況【神戸市】」
神戸市中央区の「ISR e-Sports」は、2020年3月に開設された60歳以上限定・会員制(登録無料)のeスポーツ施設です。完全予約制で、平日は1日3部制・1部1,000円(税込)。各部はプレイ90分のあとに「クールダウンタイム」30分があり、コーヒーを飲みながら会員同士で談笑する時間が組み込まれています。
ゲームの始め方やプレイの補助を施設スタッフが一緒に行うため、パソコンやゲームが初めての方でも参加できます。自治体の体験会や介護施設のレクリエーションとは別に、「自分で通える場所」という選択肢です。
出典:ISR e-Sports「60歳以上限定eスポーツ施設」
(3)シニアのeスポーツ大会とチーム
①ねんりんピックはばたけ鳥取2024(eスポーツ交流大会)
2024年10月に鳥取県境港市で開かれた第36回全国健康福祉祭(ねんりんピック)では、eスポーツが初めて正式種目になりました。種目はNintendo Switch版「太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル」で、60歳以上の3人1組のチームが合計点を競い、予選リーグの上位8チームが決勝トーナメントに進む形式です。
境港市の担当者は「告知が十分にできなかったにもかかわらず30チーム以上が集まった」と振り返っており、運営には地元の高校生もサポートに入りました。
出典:鳥取県eスポーツ協会「ねんりんピック鳥取2024 eスポーツ大会 特設ページ」/千葉大学予防医学センター・日本eスポーツ連合「高齢者eスポーツ導入ガイド」
②マタギスナイパーズ(秋田県)
秋田市のIT企業・株式会社エスツーが運営する「マタギスナイパーズ」は、2021年9月に結成された日本初のシニアプロeスポーツチームです。当初65歳以上だった加入条件は2022年6月に60歳以上へ広げられ、2023年時点でメンバー16人・平均年齢67歳。「年齢を重ねてもeスポーツに取り組める」ことを体現する存在として注目されています。
出典:マタギスナイパーズ 公式サイト/秋田県eスポーツ連合「チーム結成記者会見」/日本商工会議所「Assist Biz」
③熊本県美里町のシニアeスポーツチーム

美里町は2020年9月に熊本eスポーツ協会と連携協定を結び、介護予防を軸にした「シルバーeスポーツ事業」を進めてきました。地区リーダーを中心に住民が自発的にeスポーツに取り組む環境を整えている点が特徴です。
町のシニアeスポーツチーム(平均年齢82.7歳、78〜88歳の女性3名)は、2026年1月18日に京都サンガスタジアムで開かれた「京都府知事杯2025 シニア・ジュニアeスポーツ大会」に出場し、3対3のシューティングゲームで1勝を挙げました。
出典:一般社団法人ジャパンeスポーツアソシエイション「熊本県美里町のシニアeスポーツチーム(平均年齢82.7歳)」/千葉大学予防医学センター・日本eスポーツ連合「高齢者eスポーツ導入ガイド」第6章
自治体の事業として高齢者向けeスポーツを導入する際のメリットや進め方、体制づくりについては、以下の記事で詳しく解説しています。

6.高齢者とeスポーツに関してよくある質問
ここでは、高齢者とeスポーツに関してよくいただく以下の質問について、それぞれ回答を紹介します。
(1)eスポーツは高齢者に適したスポーツですか?
適しています。激しい運動が不要で、認知機能や身体機能の維持に役立つことが実証事業で報告されています。
車いすの方や体力に自信のない方でも取り組める一方で、画面を読み取り、判断し、手を動かすという動作が認知機能や身体機能の維持に役立つことが報告されています(1章参照)。ただし長時間のプレイは目や腰に負担がかかるため、1回1時間以内を目安にこまめに休憩を取りましょう(2章参照)。
(2)最高齢のプロゲーマーは何歳ですか?
ギネス世界記録に「最高齢のプロゲーマー」という公式記録はありません。
年齢に関する公式記録としては、千葉県の森浜子さんが2019年に「最高齢のゲーム動画投稿YouTuber」として89歳で認定されています。また、競技の分野では、日本初の60歳以上限定プロチーム「マタギスナイパーズ」(秋田県)が2021年から活動しており、年齢を重ねてもeスポーツに取り組める例として知られています(5章参照)。
出典:Guinness World Records「Oldest videogames YouTuber (female)」/秋田県eスポーツ連合「チーム結成記者会見」
(3)高齢者のeスポーツ導入に使える補助金・助成金はありますか?
自治体によっては、高齢者の健康増進や介護予防を目的とした事業に補助金・助成金を設けています。
たとえば奈良県では、川西町のeスポーツを活用したフレイル予防事業が「大和平野中央田園都市構想推進のための事業」として採択され、費用の一部が補助されました。お住まいや施設のある自治体の高齢福祉担当窓口や地域包括支援センターにご確認ください。
自治体の事業として導入する場合の予算・財源の考え方は、以下の記事をご覧ください。

(4)高齢者にeスポーツを勧めたいのですが、何から始めればよいですか?
機材を買う前に、自治体や地域の体験会で本人が楽しめるか確かめてみるのがおすすめです。
最初の1本は「太鼓の達人」「ぷよぷよeスポーツ」のように操作が単純で結果がすぐわかるものが向いています。周りの人は教える側に回るより、一緒にプレイして声をかける役に回るとハードルが下がります(始め方の詳細は4章)。
(5)eスポーツは介護施設やデイサービスのレクリエーションにも使えますか?
使えます。沼津市の通所リハビリ施設では、常設のレクリエーションとして定着しています。
同施設では2023年から導入し、利用者の2〜3割が定期的に参加しています。定着のコツは「強制せず、やりたい人がやる」形にすることで、職員が「健康ゲーム指導士」の資格を取って運営している例もあります(事例は5章)。
7.まとめ
今回は、高齢者とeスポーツをテーマに、健康への効果から始め方・おすすめゲーム・全国の事例まで幅広く解説しました。
eスポーツは激しい運動を必要とせず、身体的なハードルが低い点が高齢者に適したスポーツです。認知機能や身体機能への良い影響が実証事業で報告されているほか、仲間とのつながりや生きがいづくりにもつながります。「ゲームは若者のもの」というイメージはすでに過去のものになりつつあり、シニア世代の新たな選択肢として定着しつつあるといえるでしょう。
まずは操作がシンプルなゲームから試し、お住まいの地域の体験会を活用しながら、自分に合ったペースで取り組むことが長続きのコツです。
高齢者向けeスポーツイベントの企画・運営をお考えの施設・自治体・企業のご担当者様には、イベント制作会社の株式会社ストラーツがおすすめです。全国で広がるシニアeスポーツの事例を踏まえながら、企画立案から会場手配、当日の運営までワンストップで対応。
大手広告会社やイベント会社出身のプロフェッショナルが、健康増進や多世代交流といった目的に応じた高品質なeスポーツイベントを実現します。「何から準備すればいいかわからない」「機材や運営の人員が確保できない」といったお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。


